平成23年度に実施した講座の実施報告を、会報誌「ちえボラLINK」から転載します。
今回は平成23年11月にアート班で実施した講座「北海道の芸術 この50年」です。
真っ青な空、小高い丘を全力でこちらに駆け下りる一頭の牡馬。
青い空と光が溢れた北国の秋の草原を疾走する逞しい四肢が実に美しい。
若く血統つきのサラブレッドでなく、少し馬齢を重ね重き荷を引く
ばんえい競馬用の肢体は無骨で逞しく、野にあると一層輝く美しさで迫ってきます。
この撮影は丘のこちらに雌馬を配して鳴かせ、
丘の向こうの牡馬を離して走らせたそうです。
昭和48年9月30日東芝日曜劇場「ばんえい」の1場面です。
この年の芸術祭優秀賞とギャラクシー個人演出賞(守分寿男氏)を受けています。
テレビカメラによる撮影技術を駆使し馬や風景の撮影を通じて
登場人物の心象表現に高めるユニークな演出が認められました。
使い方が素晴らしいのでしょう、
喋れたならこの馬は最優秀助演賞に輝いたに違いありません。
そうウマくはいきませんでしたが。
講座風景 |
稀代の女優田中絹代と名優笠智衆が主演の「幻の町」は
東芝日曜劇場千回記念番組(昭和51年2月8日)。
20年住んだ樺太から引揚げてきた老夫婦が、
出会い・結婚・娘を育てその子を埋めた、かの地の思い出を
形にしようと地図つくりを始め、どうしても分からぬ所を埋めようと
訪ねた厳寒の小樽での1日の物語。
台本を読んで快諾した田中が、寒いからと出演を渋る笠を
「役者たるものこれが最後の作品と言う、それくらいの覚悟が必要よ」
と説得して実現した企画。
軒先から長いつららが下がる小樽の家の前で
ひょんなことから口付けの話になり
「50年連れ添ってますが、1度もしてもらったことありません」
「ほーか、して欲しいか」
「はい」
と言われ、笠が素早くキスした後、
少年のように後ろを向いてスキップしました。
飄々とした笠の心のときめきが伝わってきました。
これもこの年の芸術祭優秀賞を頂きました。
「北海道の芸術 この50年」1回目映像分野
~守分寿男の描いた北海道~長沼修講師の講座の1コマです。